この記事で分かること
- 建設業者が宅建業免許を取得して兼業する3つの具体的なメリット
- 大阪府で宅建業免許を新規取得するための要件と手続きの流れ
- 建設業の専任技術者と宅建業の専任宅建士の兼任が認められる条件
- 兼業する場合の事務所要件と実務上のポイント
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建設業許可と宅建業免許の両方を取得する3つのメリット
建設業者が宅地建物取引業(以下『宅建業』)の免許を取得して兼業することで、事業の幅が大きく広がります。ここでは代表的な3つのメリットを解説します。
メリット1:自社建築物件の直接販売で利益率アップ
建設業者が自ら建築した住宅を第三者に販売する場合、それが宅地建物取引業法(以下『宅建業法』)第2条第2号に規定する『宅地建物取引業』に該当するかどうかは、『業として』行うかどうかで判断されます。
国土交通省の『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』では、以下の5つの要素を総合的に勘案して判断するとされています。
| 判断要素 | 事業性が高い | 事業性が低い |
|---|---|---|
| 取引の対象者 | 不特定多数に広く募集 | 親族・隣接地主など特定の関係者 |
| 取引の目的 | 利益目的 | 相続税の納税や既存住宅の処分など |
| 取得経緯 | 転売目的で取得 | 自己使用目的で取得 |
| 取引の態様 | 自ら購入者を募り直接販売 | 宅建業者に代理・媒介を依頼 |
| 反復継続性 | 反復継続的に取引 | 1回限りの取引 |
建売住宅のように複数棟を建築して不特定多数に販売する場合は、明らかに『業として』に該当し、宅建業免許が必要です。宅建業免許を取得すれば、仲介業者を通さず自社で直接販売できるため、仲介手数料の負担がなくなり、建築から販売まで一気通貫で利益率の向上が見込めます。
> 実務ではこういう相談が多い
> 『自社で建てた物件を1棟だけ売るなら免許は要らないのでは?』というご相談をいただくことがあります。確かに、自己使用目的で建てた物件を事情の変化で1回限り売却するだけであれば、『業として』に当たらない可能性はあります。しかし、建設業者が建物を建てて販売するという行為は、取得経緯が『転売目的』と評価されやすく、たとえ1棟でも区画割り販売を伴う場合は反復継続的な取引とみなされます。判断に迷う場合は、所管の行政庁に事前確認することをお勧めします。
メリット2:中古住宅買取からリノベーション販売のビジネスモデル
近年、中古住宅を買い取ってリノベーション工事を施し、付加価値をつけて再販売するビジネスモデルが注目されています。建設業許可を持つ事業者が宅建業免許も取得すれば、仕入れ(買取)・工事(リノベーション)・販売の全工程を自社で完結できます。
外注コストを削減できるだけでなく、工事品質を自社で管理できるため、お客様への訴求力も高まります。
メリット3:経審(Y点)における兼業売上高の加算効果
公共工事の入札参加を目指す建設業者にとって、経営事項審査(経審)の点数は重要です。経審の経営状況分析(Y点)では、純支払利息比率や負債回転期間の計算において、売上高は『完成工事高+兼業事業売上高』で算出されます。
宅建業による売上が兼業事業売上高に加算されることで、売上高の分母が大きくなり、純支払利息比率が改善する可能性があります。純支払利息比率はY点への寄与度が約29.9%と8指標中最も高いため、兼業売上の増加がP点の向上につながるケースがあります。
| 指標 | 売上高に兼業売上を含むか | Y点への寄与度 |
|---|---|---|
| 純支払利息比率(X1) | 含む | 29.9% |
| 負債回転期間(X2) | 含む | 11.4% |
| 売上高経常利益率(X4) | 含む | 5.7% |
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大阪府で宅建業免許を新規取得する際の要件と手続き
大阪府内のみに事務所を設置する場合は大阪府知事免許、複数の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣免許が必要です。ここでは多くの建設業者が該当する知事免許を中心に解説します。
免許区分の判断基準
宅建業法第3条第1項に基づき、免許区分は事務所の設置場所で決まります。
| 区分 | 条件 | 申請先 |
|---|---|---|
| 都道府県知事免許 | 1つの都道府県内のみに事務所を設置 | 大阪府知事 |
| 国土交通大臣免許 | 2以上の都道府県に事務所を設置 | 国土交通大臣(知事経由) |
専任の宅地建物取引士の設置要件
事務所ごとに、宅建業に従事する者5名に1名以上の割合で専任の宅地建物取引士を設置しなければなりません(宅建業法第31条の3)。『専任』とは、その事務所に常勤し、専ら宅建業の業務に従事する状態をいいます。
専任の宅地建物取引士には以下の要件が求められます。
- 宅地建物取引士証の交付を受けていること
- 当該事務所に常勤していること
- 専ら宅建業の業務に従事できる状態であること
営業保証金または保証協会への加入
宅建業の開業にあたっては、消費者保護のために営業保証金の供託または保証協会への加入が必要です。
| 方法 | 本店(主たる事務所) | 支店(従たる事務所) |
|---|---|---|
| 営業保証金の供託 | 1,000万円 | 1事務所あたり500万円 |
| 保証協会加入(弁済業務保証金分担金) | 60万円 | 1事務所あたり30万円 |
多くの事業者は、初期費用を大幅に抑えられる保証協会への加入を選択しています。保証協会は全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)と不動産保証協会の2団体があり、いずれか一方に加入します。
> 実務ではこういう相談が多い
> 『営業保証金1,000万円は用意できない』というご相談をよくいただきます。保証協会に加入すれば弁済業務保証金分担金60万円で開業できますので、建設業者が新規参入する際はこちらを選ぶのが一般的です。ただし、保証協会への入会金や年会費が別途必要となりますので、トータルコストを事前に確認しましょう。
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建設業と宅建業の兼業で最大の注意点:専任技術者と専任宅建士の兼任問題
建設業許可と宅建業免許の両方を取得する際に、最も実務上問題となるのが専任技術者と専任宅建士の兼任です。結論として、建設業の営業所と宅建業の事務所が同一であれば兼任が認められます。ただし、事務所が別々の場合は兼任できません。
国の通達による整理:同一営業所かどうかが分かれ目
建設業許可事務ガイドラインでは、『他の法令により特定の事務所等において専任を要する者(専任の宅地建物取引士等)は、建設業の営業所と当該事務所等が同一である場合を除き、専任技術者として取り扱わない』とされています(平成7年建設省経建発第170号通達)。
つまり、兼任の可否はシンプルで、建設業の営業所と宅建業の事務所が同じ場所かどうかで決まります。
| ケース | 兼任の可否 |
|---|---|
| 建設業の営業所と宅建業の事務所が同一建物内 | 条件付きで可能 |
| 建設業の営業所と宅建業の事務所が別の場所 | 不可 |
| 別法人間での兼務 | 不可 |
大阪府での運用:申立書の提出と個別判断
大阪府では、同一法人(または同一個人業者)が同一建物内で建設業と宅建業を営む場合、以下の条件を総合的に判断して兼任の可否を決定しています。
大阪府の判断ポイント:
- 当該事務所に通勤可能な場所に居住しているか
- 他の法人の常勤役員や従業員を兼ねていないか
- 営業時間中にその事務所で業務に従事できる状態にあるか
- 業務量が過大で一方の業務に支障が出るおそれはないか
実務上は、宅建業免許の新規申請時に『法令による専任業務の兼務に関する申立書』を提出し、大阪府がその内容を審査したうえで可否を判断します。提出すれば自動的に認められるわけではなく、勤務実態や業務量を踏まえた個別審査である点に注意してください。
> 実務ではこういう相談が多い
> 『専任技術者と専任宅建士の兼任は認められないと聞いたのですが…』と不安を抱えてご相談に来られる方が少なくありません。実際には、同一法人・同一建物内であれば国の通達に基づき兼任の道が開かれています。大阪府でも、申立書を提出して審査を受ければ認められるケースが大半です。ただし、建設業の現場が多忙で営業所にほとんど不在、といった状況では常勤性に疑義が生じ得ますので、勤務実態を説明できる体制を整えておくことが大切です。
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宅建業免許の事務所要件の注意点:独立性の確保
建設業の事務所と宅建業の事務所を同一の場所に設置すること自体は問題ありません。ただし、宅建業法上、事務所には一定の独立性が求められます。
大阪府が求める事務所の独立性
大阪府では、宅建業の事務所について以下の基準を設けています。
- 継続的に業務を行うことができる施設であること
- 他の法人や個人の生活部分から独立していること
- テント張り、ホテル客室、コンテナハウスなどの仮設建築物は不可
他の事業者と同一フロアを使用する場合
他社と同じフロアに事務所を構える場合は、次の条件を満たす必要があります。
- 高さ170cm以上の固定式パーテーションで区画されていること
- 他社の事務所を通らずに直接出入りできること
自社の建設業事務所と兼用する場合
同一法人が建設業と宅建業を同一事務所で営む場合、独立性の問題は生じにくいですが、以下の点に注意してください。
- 事務所入口に宅建業の商号を掲示すること
- 報酬額表(宅建業法第46条に基づく報酬の限度額)を事務所内の見やすい場所に掲示すること
- 従業者証明書を従業者に携帯させること
- 帳簿の備え付けなど宅建業法上の義務を遵守すること
> 実務ではこういう相談が多い
> 『今の建設業の事務所をそのまま宅建業の事務所にできますか』というご質問をよくいただきます。同一法人であれば基本的に可能ですが、事務所の写真撮影による審査がありますので、整理整頓された状態で、宅建業の事務所としての体裁を整えておく必要があります。報酬額表の掲示場所や標識の設置場所も事前に確認しておきましょう。
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まとめ
建設業者が宅建業免許を取得して兼業することは、事業の幅を広げるうえで非常に有効な選択肢です。本記事のポイントを整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主なメリット | 自社物件の直接販売、リノベ再販ビジネス、経審Y点の改善 |
| 免許区分 | 大阪府内のみなら知事免許、複数都道府県なら大臣免許 |
| 費用の目安 | 保証協会加入なら弁済業務保証金分担金60万円(別途入会金等) |
| 専任者の兼任 | 同一法人・同一営業所なら可能(大阪府は申立書を提出し個別審査) |
| 事務所要件 | 同一法人の兼用は可能だが、掲示物や帳簿等の整備が必要 |
ただし、専任技術者と専任宅建士の兼任の可否は都道府県によって運用が異なります。また、宅建業には独自の義務(営業保証金、帳簿備え付け、従業者証明書の携帯など)がありますので、事前に十分な準備が必要です。
建設業許可・宅建業免許の取得や兼業に関するご相談は、行政書士ARISEリーガルオフィスまでお気軽にどうぞ。
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