建設業許可の新規申請で、いちばん詰まりやすいのが『経管(常勤役員等)』です。
要件そのものより、証明の組み方で止まります。
許可行政庁は『書類で』判断します。経験がありそうでも、ルート選定がズレていたり、年数が『重なって』見えなかったり、常勤性が弱いと、普通に差戻し・補正になります。
この記事では、大阪府知事許可を前提に、経管要件の正しい見方と、申請が通らない典型原因、経験証明の組み方のコツを実務目線で整理します。
都道府県で確認資料の運用差が出るため、最終確認は申請先の最新手引きで行う前提です。
この記事で分かること
経管(常勤役員等)の正しいルート選定(イa1〜a3/ロb1・b2)
申請が通らない3つの典型的な原因
経験年数を『重ねて証明する』実務のコツ
常勤性の確認ポイントと略歴の整合性
経管とは何か|令和2年改正で『個人経験が不要になった』わけではない
令和2年改正以降、いまでも実務では『経管』と呼ばれますが、制度上は『常勤役員等(経営業務の管理責任者等)』として整理されています。
ここでありがちな誤解があります。
『組織体制を見る制度に完全に置き換わった』という説明は雑です。
個人の経験で満たすルート(イ)も残り、補佐者を置くルート(ロ)が整理・明確化された、という理解のほうが実務的には正確です。
経管(常勤役員等)のルートは『3パターン』ではなく、実務上はもう少し細かい
法人なら常勤の役員のうち1人、個人なら本人または支配人のうち1人が、所定のルートのいずれかに該当する必要があります。
1. イのルート(個人経験型:a1/a2/a3)
『イ』は、いわゆる『経管経験』で満たすルートです。大阪府でも a1〜a3 に分けて整理されています。
a1:建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験
a2:建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位で、権限委任を受けて経営業務を管理した経験
a3:建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位として、経営業務の管理責任者を補佐した経験
ここを全部ひとまとめにして『取締役じゃないなら6年』と書くと危険です。
a2(権限委任)と a3(補佐)は、求められる確認資料の性格がかなり違います。
2. ロのルート(常勤役員等+直接補佐者型:b1/b2)
もう一つが『ロ』です。常勤役員等本人の経験だけでなく、財務管理・労務管理・業務運営について、それぞれ5年以上の経験を持つ『常勤役員等を直接に補佐する者』を置くルートです。
補佐者は、条件を満たせば1人が3分野を兼ねることも可能です。
ただし、申請会社側でその経験と現在の地位をきちんと証明する必要があります。
3. ハのルート(国土交通大臣認定)
制度上はありますが、通常の中小事業者の新規申請では、まずイかロで整理できるかを見るのが実務です。
申請が通らない原因1|そもそも当てはめるルートを間違えている
経管で最初にこけるのは、『経験はありそうだから通るはず』という雑な当てはめです。
たとえば、前職で『取締役ではなかったが、建設部門の執行役員だった』というケースは、a2 の可能性があります。
一方で、単に部長職だっただけなら、a3 やロの補佐者型で見る話になりやすく、要求資料もかなり変わります。
つまり、問題は『経験があるかないか』ではなく、その経歴をどの箱に入れるかです。
ここを外すと、
という事故が起きます。
書類が足りないのではなく、ルート選定が間違っている。
これが地味に一番痛いです。
申請が通らない原因2|経験年数が『ある』のではなく、『重なって証明できていない』
経管で本当に重要なのは、『何年働いたか』ではありません。
重要なのは、次の3つが必要年数分、きちんと重なって見えるかです。
大阪府では、経験年数の確認にあたって、法人役員なら法人税申告書・決算報告書・工事実績資料・登記簿等、個人事業主なら所得税申告書・工事実績資料等を組み合わせて確認していきます。
しかも実務では、単に『5年分の請求書がある』だけでは弱いです。
経験期間が連続しているかが重要です。
たとえば、代表的な工事実績と次の工事実績の間が大きく空いていると、その間の補足資料を求められることがあります。
つまり、よくある失敗はこうです。
この状態、行政手続ではかなり弱いです。
書類の物量で殴れば勝てるわけではありません。ここ、実務のいやらしいところです。
受付印の説明も古いままだと危ない
確定申告書について、昔の感覚で『受付印が必須』と書き切るのも危険です。
現行運用では、税務署の受付印の扱いが変わっており、電子申告の場合は受信通知で確認する整理になっています。
こうした細部が古いと、記事全体の信頼感も落ちます。
申請が通らない原因3|『常勤』を軽く見ている
経管は、経験があれば終わりではありません。
申請会社で常勤していることが必要です。
ここでいう『常勤』は、単に名前が役員欄に載っているという意味ではありません。
実際に、その会社で日常的・継続的に職務に従事していることが前提になります。
そのため、次のようなケースは要注意です。
少なくとも、『役員に入れておけばよい』という発想は通りません。
常勤性は、健康保険・厚生年金や住民税特別徴収などの資料で確認されることが多く、経験年数と同じくらい軽視できない論点です。
実務上は、『他でもフルタイム、こっちでもフルタイム』は、かなり無理筋になりやすいと見ておく方が安全です。
経験証明のコツ1|『書類を集める』のではなく『年表で重ねる』
経験証明は、先に年表を作るとかなり整理しやすくなります。
法人の場合
個人事業主の場合
この3本、または2本を横に並べて、どこが重なっているかを見ます。
最初に年表を作らず、書類だけ集めると、
という事故が起きやすいです。
行政手続では、あとから見つかる空白期間ほど厄介なものはありません。
経験証明のコツ2|前職の会社経験は『使えることがある』が、楽ではない
前職の建設会社での役員経験を使うこと自体は、制度上ありえます。
ただし、使えるからといって簡単とは限りません。
むしろ、難易度は上がりやすいです。
よくある障害は次のとおりです。
つまり、『前職で長く役員していたから余裕』とは限らない、ということです。
ネットで許可業者だったかを検索して確認することはできますが、それはあくまで入口です。
検索できたことと、申請に耐える証明ができることは別です。
このあたり、ネット検索の便利さと、許可実務の厳しさは、見事なくらい別の生き物です。
経験証明のコツ3|略歴の整合性を甘く見ない
経管で落ちるのは、『証拠がない』だけではありません。
略歴の整合性が取れていないことでも、かなり心証が悪くなります。
特に注意したいのは、過去に別の手続で提出した書類との整合です。
たとえば、
などで大阪府へ提出した略歴書等がある場合、今回の記載と食い違うと、一気に怪しく見えます。
人の記憶はわりと適当ですが、行政庁の書類はその適当さに付き合ってくれません。
既に他の許認可を扱っている会社ほど、今回だけの略歴ではなく、既提出資料との整合を必ず見た方が安全です。
実務で確認しておきたいチェックポイント
経管で失敗しないために、最低限ここは確認してください。
候補者が、イの a1・a2・a3、ロの b1・b2 のどこに入るのか
法人税申告書・所得税申告書、工事実績、登記・在職資料の期間が重なっているか
工事実績の間隔が空きすぎていないか
常勤性を示す資料を出せるか
既提出の許認可資料や略歴書と今回の記載に矛盾がないか
ロのルートや認定絡みなら、事前相談が必要ではないか
まとめ|経管は『経験があるか』ではなく『その経験をどのルートで、どう重ねて示せるか』
経管は、要件そのものより証明設計で差がつく論点です。
ポイントはシンプルです。
この順番で考えると、無駄な補正や差戻しをかなり減らせます。
建設業許可の経管は、『経験があるか』だけで決まる話ではありません。
その経験を、どのルートで、どう証明するか。
ここを外さないことが、申請を通すための実務上の核心です。
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